Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いなかいしのこ

田舎医師の子

相馬 泰三

Leggi 田舎医師の子 (いなかいしのこ) di 相馬 泰三 (そうまたいぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.947 caratteri · 76 schermate

Aozora Bunko

」

で、彼は、その日から、できるだけ詳細に自分の過ぎし時代のさまざまな事柄に探り入る事につとめた。そして思い出すがままにそれを一々原稿紙に書きつけた。時代がいろいろに前後になった。彼は、最初はただ材料を集めるだけの考で、そんな事には関係なくどんどん仕事を運んで行った。一つの端緒から手繰り手繰りしてゆくうちにそれからそれと五日間も書き続けてまだその項が終らないような事もあった。おのおのの項が終るごとにそれを一つに纒めて紙捻で綴じた。三週間もたたないうちにその原稿は積もり積って三四百枚にもなっていた。堆いその重りを眺めてみずから驚嘆した。倦む事なくなお熱心に続けて行った。

だいぶ冷え冷えして来た。ある朝、真白ろに霜がおりた。村雨の時節がやって来た。雲が小暗く流れて来たかと思うと少しの堪えもなくすぐにばらばらと降りこぼれた。かと思うと跡から霽れて行った、秋の薄日が追うようにして間もなく儚いその光を投げてぱーっと現われ出たりした。雨が、まるで歩いているかと思われるようにして過ぎてゆくようであった。

庸介の机の側には大きな火鉢が新たに据えられた。彼は疲れて来ると、静かに筆を擱いてそれに両手をかざした。