Classici giapponesi con furigana
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しんようどうき
申陽洞記
田中 貢太郎
Leggi 申陽洞記 (しんようどうき) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5175 caratteri · 11 schermate
彼は眼を開けた。黄昏のような暗さがあった。彼は起きあがって体のまわりに手をやってみた。体には別に異常もなかったが、持っていた弓も、背負っていた矢も矢筒ぐるみなくなって、僅に矢尻に浸める毒を盛った小さな皮袋が残っているばかりであった。矢と弓はとても手に返らないと思ったが、それでも惜しいので俯向いて四辺を見廻した。やはり弓と矢は見えなかった。
恐ろしい不安がその後からきた。李生はどうしてこの穴から出て往ったものだろうと思いだした。彼は足の向いている方へと微闇の中を歩いて往った。百歩ばかり往ったところで微白い光が見えた。そこには大きな岩がでっぱっていた。岩に随いて廻ると明るい昼の世界があった。一筋の路が苔の中に見えていた。李生はその路を歩いて往った。
大きな石室があって、その入口に番兵らしい二三の者が戟を持って立っていた。李生はその前へ往った。戟を持った者は猿の顔をしていた。それは昨夜古廟の中で見た姿であった。石室の入口には「申陽之洞」という扁額が懸っていた。李生は昨夜自分が矢を著けた三山の冠を着た妖怪は、この内にいるのだなと思った。
「その方は何者だ、どうしてここへやってきた」