Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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びょうちゅうき

病中記

寺田 寅彦

Leggi 病中記 (びょうちゅうき) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3795 caratteri · 8 schermate

Aozora Bunko

上衣を脱いで右側の机の上に投げ出し机の前に帰ったが同時に名状の出来ない胸苦しさを覚えた。横臥したいと思ったが寝る所がないから机の上に突伏して右に左に頭をもたせてみたが胸苦しさは増すばかりで全身は汗ばんで来た。室の向うの隅に毛布があるのを思い出して席を立ってそれを取りに行った。毛布に手をかけた瞬間に眼界が急に真暗になってからだが左右にゆらぐを覚えた。何とも知らずしまったという気がした。次の瞬間には自分の席の背後の扉の前に倒れていた。どうしてここまで来たかは全く覚えていない。何とも云えぬ苦悶が全身を圧え付けて冷たい汗が額から流れた。その苦しみを少しでも軽くする唯一の方法として大きな唸き声を出しつづけた。二、三日前靴を修繕にやったので古いゴツゴツの靴をはいていたがそれが邪魔で堪らない。足を悶える度にそれがコツコツ戸棚や扉に当る堅い冷たい不愉快な感覚が非常に誇張されて苦しみを助けた。室の入口の壁に立っているスチームヒーターの上に当る白壁が黒く煤けているのが特に目立って不愉快であった。妙な事にはこの汚い床の上に打倒れてうめいている自分とは別にまた自分があって倒れている自分を冷やかに傍観しているような気がした事であった。