Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Leggi 痴人の愛 (ちじんのあい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 179.399 caratteri · 353 schermate

Aozora Bunko

と云われたとき、「勝手に出て行け」と云えるだけの、覚悟が出来ているならいいが。………

しかし私は、この点になるとナオミの方にも同じ弱点があることを知っていました。なぜなら彼女は、私と一緒に暮らしてこそ思う存分の贅沢が出来ますけれども、一と度此処を追い出されたら、あのむさくろしい千束町の家より外、何処に身を置く場所があるでしょう。もうそうなれば、それこそほんとに売笑婦にでもならない以上、誰も彼女にチヤホヤ云う者はなくなるでしょう。昔はとにかく、我が儘一杯に育ってしまった今の彼女の虚栄心では、それは到底忍び得ないに極まっています。或は浜田や熊谷などが引き取ると云うかも知れませんが、学生の身で、私がさせて置いたような栄耀栄華がさせられないのは、彼女にも分っている筈です。そう考えると、私が彼女に贅沢の味を覚えさせたのはいい事でした。

そうだ、そう云えばいつか英語の時間にナオミがノートを引き裂いた時、己が怒って「出て行け」と云ったら、彼女は降参したじゃないか。あの時彼女に出て行かれたらどんなに困ったか知れないのだが、己が困るより彼女の方がもっと困るのだ。己があっての彼女であって、己の傍を離れたが最後、再び社会のどん底へ落ちてこの世の下積になってしまう。