Classici giapponesi con furigana
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わたしのちち
私の父
堺 利彦
Leggi 私の父 (わたしのちち) di 堺 利彦 (さかいとしひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5750 caratteri · 12 schermate
唐紙と白紙を買ったのは、その頃、少し文人風の書画の真似をやりかけていたからであった。ところが二、三日後のある日、母が私を連れて屋敷内を歩いていた。何か母が私に言いたいことがあるのだと直感された。私は非常におそろしくなった。しかし母の態度は平生よりも柔しかった。竹藪の片わきの、梨の木の下に来た時、母はいよいよ口を切った。「利さん、ひょっとお前は――」サア来たと私は思った。しかし母は非常に柔しく、非常に遠慮がちに「ひょっと」「ひょっと」を繰返して、そうならそうで仕方がない、決して叱りはせぬから、とにかく素直にそれを出してくれと言った。私は非常な慚愧を感じて、一も二もなく兜をぬいだ。父はそれについて、遂に一言も言わなかった。
ついでに今一つ私の盗みを書きつけておく。その頃、錦町のある小間物店で、私は人のそばで遊んでいるようなふりをして、柄のついた小さい虫眼鏡を一つ盗み取った。それを通して物を見ると、何でも素晴らしく大きく見えたので、面白くて仕様がなかった。しかしそれを友達に見せて自慢することも、一緒に面白がることも出来ないのが、非常に残念だった。同時に、もしか露見しやせぬかという恐怖が盛んに起って来た。