Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
すると高氏は、不快がるどころか、唇にしかけた杯の酒を吹きこぼして笑った。
「うまいことを申すものじゃな。鍋のふたと、釜のふたとは」
庶民の機智に、すっかり感心したていで。
「おもしろい。まさしゅう、ここでは釜は鍋に先を越されたわ。だが、凡下どもの戯れ言は、吉兆だぞ。高氏にはありがたい声だ。天が人を以ていわしめるものか」
「はて。ありがたいとは、いかなる御意で」
「わからぬか」
「解しかねまする」
「なんでもない。今のところはまあ世は泰平だ。鍋も釜も、申さば空っぽではないか。火にかけられた鍋釜ではない」
「なるほど」
「が。かりに、その尻を火にあぶられた場合は、鍋と釜と、いずれが重いか。もし一朝の事あらば、わが足利党は天下の飯を炊くであろうよ。そして新田党には、菜でも煮させておけばよい。……あはははは。どうだな、街の俚謡がそう謡うていると聞けば、めでたい辻占であるまいか」
「いや、さる御比喩とは、思いも及びませんでした。なにさま、鍋と釜では、生れながら位がちがう」
「これ、釜のふたども、分ったなら、そこで、もう一献酌いでおくりゃれ」
気のおけぬ若い主というものは、家来にとって、よいものらしい。