Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

京の小酒屋などとは、場所が違うぞ」

「はははは。大丈夫ですよ、父上、もう高氏とて、昨日の高氏ではございません」

わけもなく彼は笑ってみせた。こんな折にも、ふと心のうちで“置文”が意識される。しかしその“置文”を見た件は、父からも問われていないし、自分からもまだ自白してはいなかった。

従者八名ほどを連れ、駒の口輪は、いつもの若党右馬介に取らせた。――そして高氏は今、しきりと焦れる鹿毛の手綱を抑えながら、自邸の門から大路へ出て来た。

「若殿。鳥合ヶ原へお出向きの前に、途中、赤橋殿へお立寄りでございますな」

「む。先頃、上杉家へお使いがあって、今日は赤橋殿と御一しょに、太守のお桟敷まで罷れとのお達しだった」

「ただのお目通りなら、御所へ召されそうなもの。異な所で拝謁の仰せつけとは、そも何御用でございましょうか」

「はははは。そちは余程、苦労性よな。呼ばれたら罷るまでのこと。それしかあるまい」

街を行くには、人混みを縫うほどだった。まだ時刻も早かろうに、晴れ着の男女が、もう群れをなして、鳥合ヶ原へ急ぎあっていた。

また、その人出の中を、いちばい綺羅な武家の輿やら乗馬も織り交ざって流れて行く。