Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

番数も、終りに近づく。

いつまで、控えていては、果てしがないと思ったか、すきを見て、守時が、執権の横顔へ向って告げていた。

「太守。……先夜仰せつけの高氏を、これへ召しつれましてございますが」

「オ。来ておったのか」

「は。さきほどから」

「なぜ早く申さん。して、足利のせがれは、どこに」

高時がきょろきょろする眼の下へ、高氏は、ずっと背を屈ませて進み出た。

「――おん前に」

「ほう、いたか」

「はっ」

「そちが貞氏の子高氏か。のう赤橋。あまり似ておらんの。……母似か、そちは」

「かも知れませぬ」

「幼時、痘瘡を病んだか」

「はい、母が地蔵菩薩を信仰しておりまするせいで、子が石地蔵に似たものかと思うております」

「ひゃっ、この男」

高時は仰山に笑い反ッて。

「なるほど、おもしろいぞこの男。骨柄も逞しい。な、赤橋。取立てて得させよう。鎌倉大番とし、武者所出仕を命じおけ」

「ありがたく存じまする」

「が、ただ一つ、堪忍ならぬことがあるわえ。その腹いせに、も一つ命じる。高氏」

「は」

「余が自慢の犬、天下無敵の雷霆と銘づくる犬を曳いて、あの勝負庭の四隅の柱を三度廻ってまいれ。そしてもとの犬舎へつないで戻ったら、余の腹立ちもゆるしてやる」