Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
よも今度は、お間違いではおざるまい」
「いかにも、都のあの変事で、去年は延々となり申したが、どうやらこの秋には、部屋住みの高氏も、妻を持つ男並となりそうでござりまする」
「さだめし、蔭では悲しむ名なし草の花もあろうが」
「え?」
「いやなに。いずれ盛大な御披露もあることでしょう。そのせつには、お招きの端に、この道誉もぜひおわすれなく。……またお日取りの極り次第、こちらからも、さっそくお祝いには参上するが」
いつの場合も、妙に後味を持たせるようなことをいう癖のある男ではある――。
途上で、道誉と別れた高氏は、ふたたび、ぶらりぶらりの馬居眠りでもして行くような姿だったが、胸のうちでは、
「行く末、ああいう男を、敵にまわしては、うるさかろう。あの地位、あの婆娑羅、嘘も平気で忘れうる人間の無恥と粘りづよさも、時によれば、道具といえぬこともない」
と、考えたり、また、
「……口ではこのたびのことを祝しながら、また口振りをかえて、さだめし蔭ではそれを悲しむ名なし草もあろうに……などと申しおったが、あれは何の意味でいったのか?」
などと、こだわるともなく、道誉一流のヘンな後味の語に、彼の茫洋たる性情にしても、つい、どこか引ッかかっている顔つきだった。