Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

「あッ変化。この変化めら」

彼の薙刀が、車のような光の輪を描く。

その手ごたえのたび、ひいッ――と聞く闇の血を幻覚の誇張のまま感じ取って、高時は例の奇声で、急に、きゃッきゃッと、笑いはじめた。あたかも、子供がトンボの群れに酔ってもち竿でも振るようにである。その薙刀を、振り廻し振り廻し、ひとりも遁さじとする眼つきだけには、狂いがない。

杉戸の外で、わいわいいうのは聞えるが、家臣たちも恐れて入っては来なかったし、役者たちは、恐怖の檻を、まろび合い、重なり合って、いよいよただ、血の踊りをくり返すばかりだった。

――すると、一隅から、一羽の烏天狗が起って、ずかと、高時の前に立った。と思うと、

「弱法師。共に舞おうよ」

と、その襟がみを引っつかんでいた。手抗いの隙などは、与えもしない。高時の体を二、三度、ぐるぐる振り廻してから、膝の下に抑えつけた。

「田楽たち。逃げろ、逃げろ。いまのうちだぞ」

同じ扮装の天狗だが、この一天狗が、田楽仲間でなかったことは、論をまつまい。――が、高氏の声に似ていたと気づく者も、たれ一人なかったようだ。

「かっ。離せ」

異常な力だ。これが柔弱な執権どのとは思われない。