Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

「そちらではございませぬ。……御寝所へ。……小殿、御寝所の内へ」

そこのほのかな明りと、ふたつの枕に焚きこめてある伽羅の香が、ふと高氏を心づかせた。

「そちは誰だ」

「オオ、恐いお顔」

「たれだっ」

「ま、おはかまでも解いて、衾へおまろびなされませいな」

「なに」

かすみの中のような眸を、じっと凝らして、その白い顔へ。

「なアンだ……鳰か」

「わたくしではいけません?」

「遊女の鳰か」

「よくおわかりのくせに」

「あっちへ行け」

「そんな……、つれない」

「何がつれない」

「小殿はさびしかろ。ようご介抱してあげよと、粋な道誉さまのお耳打ちでもございまする。それなのに、宵のお馴ずみもどこへやら、そのような、よそよそしい」

「もういい。さがれ」

「さがりませぬ」

「うるさいやつ」

酔いの力は加減できない。つき飛ばされたのは鳰だけでなかった。大きな駄々っ子に似た彼の身なりも仰向けにぶっ仆れた。

「憎い小殿」

鳰はすぐ身をくねらせた。そして、男の胸へ体を投げた。こんな仕儀は遊女の名折れと、腕にヨリをかける気でもあろうか。

「ええ、憎い。いッそもう可愛いいほど」

と、その黒髪は、下の顔を、藻のようにおおい隠したまま、離さじと一そう身を搦めてくる。