Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
「…………」
「しかるに今日、殿には、恭順を称えて寺を出で給わず、それもそのお心が、天聴にとどいているならまだしものこと、そうでもないのに、ひとり何を守ろうとなさるのか。われら将卒には、得心がゆきません。……孤軍の御舎弟を見殺しにし、お味方すべてをも失ッた後に、いったい何があるのでしょう。……あわれ、三河におわす千寿王さま、みだい所さま、いや足利一類と見なさるる者、ひとりも世には残りますまい」
ことばは、切々、ていねいであっても、身はそのまま戦場人の二人だった。このとき、上杉重房も言った。
「左衛門ッ。これまでだ。殿はつんぼとみえる。もう申すもせんない。やめろっ、腹切ッてお目にかけるばかりだわ」
「おうっ、御覧ぜよ殿」
二人は坐り直した。革胴の紐を解いて短刀を左に持った。――が、尊氏はそれも見ている気か、なお黙っていた。
しかし、尊氏の蔭に控えていた頼春が、ばっと進み出て二人を止めた。たかぶる声と声の下に三名のからだは一つものに見え、相擁しながら、主君を後ろに、その主君を罵倒し、
「見損った! ああ、見損ったおれたち家来も馬鹿だッた」
と、無念泣きに泣き入ってしまったのであった。