Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
彼の後ろにも人がいた。
探題の越後守北条仲時である。
「縫殿」
そっと袖をひいて、
「もう参りましょうか」
「お……」
縫之助は振りむいたが、その唇を仲時の耳のそばへ寄せて行った。仲時へも、まあ覗いて見給えと、すすめるらしい白い歯だった。
仲時はいやな顔をした。
「…………」
黙ってその顔を横に振っただけである。見るにしのびないとはいわなかった。
まもなく二人は別院の明るい廊の方へ出て来た。いまここの別院は廃屋も同然でつかっていない。――しかるに、旧役部屋らしい一室にふたりは対坐したのである。なにか極密な打ちあわせでもあるらしい。
「……では。後伏見、花園の二上皇の御裁可も」
「む。まちがいなく降るものとみております。承久ノ乱の前例もあることなので」
この縫之助秀正は、若年だが、鎌倉評定衆のひとりで、文官的な才能がある。一族には大膳ノ大夫広秀、左近将監高広などもあり、準北条氏の家格からもまず屈指な重臣といってよい。
すでに歳暮のうち。後醍醐のご処分は、
隠岐へ遠流
と鎌倉ではきまったが、いかにとはいえ……というおためらいか。さすが後伏見院には、なかなか、おうなずきもないのであった。