Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
それは、一頭の荷馬と七人ほどの野武士ていの群れで、女は一人きりだった。――いずれもが、旅装いで、並木の木蔭に休んでいたところを、折ふし村の田楽たちが通りかかって、
「おや、藤夜叉があの中に?」
と、思わず立ちどまると、女の方でも、はッとしたらしく、ついと編笠のつばへ手をやって、急に、そ知らぬ振りをするかに見えた。
そこで、人々は、
「人違いか」
と、たじろぎ合い、いちどは通りすぎたが、どうしても今のは藤夜叉だった、と言い張る者もあって、ふたたび、あとへひっ返して、
「藤夜叉ではないか」
と、呼びかけてみたのであった。
ところが、これがまちがいの因だった。彼女のまわりにいた野武士ていの男たちは、
「なんだと」
のッけから、目柱たてて、
「なにをばかな。そんなお方ではないッ。近づくと、用捨はせんぞ」
と、凄いけんまく。
しかし、田楽村の者は、近々と見て、よけいその確信を、つよめずにいられなかった。
左の瞼のへんに、青い痣がうかがわれたり、ひどく窶れても見えたが、同じ村に住み、同じ楽屋生活もし、幼少からよく覚えている藤夜叉なのだ。とまれ十目十指、見ちがえるわけはない。