Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
「……無情な幕府の仕打ちよ」と、彼が怨んで立ったと噂されたのも道理だといってよい。
――が、この事を以て、後に彼の幕府叛逆の原因とするなどは当らない推量というものだ。むしろ、父の生涯ともそんな別れ方をして立った出陣は、高氏の内にひそむ多年の大志を、ひとしお途上の秋風に吹き研がせていたことだろう。いずれにせよ、後年の足利尊氏なるものも、笠置包囲軍の一角に、遅くはあったが、参加していたのである。
しかし、笠置合戦では、この大鵬は、まだなんらの動きもその圭角も見せていない。
合戦はまず、やたらに目先の功を競う我武者な前線の気負い者から口火が切られた。
相互、敵陣をみても、すぐには合戦とならなかった。
何しろ笠置の天険だ。不気味な、さぐり合いの対峙が二、三日つづく。
昼は、鳥の音も絶え、夜となれば、二万ぢかい寄せ手の布陣が、笠置の砦を二里余にわたって包囲している“火の図”となって、描き出された。
峰から峰を綴る火も、沢にひそむ伏陣の火も夜はチラチラ望まれる。特に、山麓の木津川べりへ近々と陣した一角では、終夜、
「一ノ木戸は?」
「街道口は?」
と、物見のうごきが、絶えなかった。