Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate

Aozora Bunko

「いただきます」

尼は一礼して、与えられた床几へかけた。

彼女は、この陣中にいる常葉駿河守範貞の妹であった。また姉の常葉ノ局は、現に、高時の側室でもある。

そして、その姉にもまさる美貌なのに、なぜか嫁ぐことも栄耀もきらって、高時の生母、覚海夫人の許でその黒髪をおろしてしまった。

それには、姉、高時、彼女自身の恋。いろんなもつれの結果だと、噂は一時さまざまだったが、しかし彼女の道心は堅固で、また尼公の寵もあつく、いつか四、五年は過ぎていた。

「太守さま」

「春渓。とうとう最後が来たらしい。して、母ぎみのお文か。おことばか」

「待たぬ日は早くまいりました。いつかはとは知りながら」

「いつかは……と。それは母公が仰っしゃっておいでたのか」

「はい。お口ぐせのように日頃から」

「むむ、思い出す。こんな日が来るぞよと、母の尼公は、わしの顔さえ見れば、きつう申した。それがうるさいので寄りつかなんだが……。今朝からはしきりと、幼い頃の、添い寝の母が思い出されてならなんだ」

「尼公さまも、ここ幾夜もお嘆きでございましたが、はや東慶寺の御門も危うくなりましたので、今暁、五山の僧衆に守られて、円覚寺の奥まった一院へお身をお移しなされました」