Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate

Aozora Bunko

「はい。尼公さまのおいいつけでもございまする」

春渓尼は明晰に言った。あくまでも冷静である。

「おん母の尼公さまにも、ただ一つのお気がかりとみえ……あわれ吾子の崇鑑(高時の法名)が、今日、どのような最期をとげるやらと、しきりに、黒煙の空を見ては、身も世もなくお念じ遊ばしておられますゆえ」

「それで?」

「それで私が、こうお使いをうけたまわってまいりました。この目で、太守のご最期の様を親しく拝してまいりましょうと」

「…………」

高時は黙った。しかし母の覚海尼公の心配と願いが、何にあるかは、やっと、それで得心がいった眉だった。

母の秋田氏、覚海夫人は、高時の父貞時が亡くなるとすぐ、仏国禅師の禅門に入り、また疎石和尚を鎌倉へ請じるなどのことにも熱心だったひとで、女性ながら五山の叢林でもおもきをなしている尼だった。

春渓尼は、そのひとの法弟でもあり、いわばまた侍女でもある。尼公の胸はたれよりもよく察している。

尼公の日ごろからの悩みといえば、ただ一つ、俗身のとき産んだ、高時という奇矯な子ひとりにあった。だからその高時の世上の悪評も、生れながらの病弱も行状ぶりも、すべて母の自分のせいのように、蔭で世に詫びてきたのであった。