Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.598 caratteri · 254 schermate
「乳は出ぬのか」
「産後の病とかで、嫋々と、物に縋らねば歩けぬような母親なので」
「やっかいな囚人だ。ま、仕方がない。裏の堂守に言って、粥の汁でも母子にくれてやるがいい」
部将は本庄鬼六といって衛門尉、六波羅検断所の一将だった。威張るはずである。
「おい」
と、その顎をまたすぐ、横の兵へ振って。
「この暇に、放免組の一人に、ここへまいれと申せ」
まもなく、放免溜りから、眼の大きな、木菟みたいな顔の男が出て来て、彼の前にうずくまった。
「放免の権三でございますが」
「そちが組の頭か」
「さようで」
「どうしたんだ。おとといから、放免組の手では、いっこう何の実績も挙らんではないか」
「おそれ入ります。何せい、総頭の忍ノ大蔵が、一昨日来、消えてしまいましたので」
「まだ死骸も見えぬのか」
「見当りませぬ」
「ばかなはなしだ。放免の総頭ともある奴が」
「てっきり、船木頼春にたばかられて、天見の辺で、どうかなったものと考えられますので、その頼春を、昨夜から拷問しておりますが、口を開きませぬ」
「彼奴は、ひとかどの侍だ。放免の調べぐらいで、口を開くはずもあるまい。いずれ、六波羅ノ庁の白洲で叩こうわい。