Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.598 caratteri · 254 schermate
わいわいと黒山のような人だかりである。話し声は、いやでも耳へ流れこむ。
――つい今し方、清水寺から降りて来た公卿風な人がある。坂下に輿か馬でも待たせておいたのか、三年坂を傘さして降りかけて来た。すると、突如、大銀杏の木蔭から、竹ノ子笠を眉深に、身には半蓑をまとった武士が、燕のごとく、公卿の傘へ、体当りにぶつかッて逃げた――。おや? と、往来の者が寄ッて見ると、すでに泥土は紅と変り、公卿は、鋭利な刃で脾腹を刺され、もう死んでいた――というのである。
何気なく、群集の肩ごしに、元成もつい、ぬかるみの死体を覗いてみた。
「……あっ?」
慄えが来て、元成は脚がガクガクし出した。――が、自分が犯人であるような錯覚に襲われて、あとの歩みは夢中だった。
死んでいた人間は、大判事中原ノ章房に、まちがいない顔をしていた。
それから数日の巷は、
大判事殺し
の噂で、もちきりだった。生前、庶民にまで評判のよかった大判事章房だけに、その非業な死には、一般の同情があつまった。
官辺では。「日ごろ、潔白な大判事ゆえ、訴訟に敗れし者の怨みか」などと、かろく触れていたが、庶民は、そのままのものとは信じない空気である。