Classici giapponesi con furigana
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あきくさ
秋草
島崎 藤村
Leggi 秋草 (あきくさ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2172 caratteri · 5 schermate
そよとの風も部屋にない暑い日ざかりにも、その垣の前ばかりは坂に続く石段の方から通って来るかすかな風を感ずる。わたしはその前を往ったり来たりして、曾て朝顔狂と言われたほどこの花に凝った鮫島理学士のことを思い出す。手長、獅子、牡丹なぞの講釈を聞かせて呉れたあの理学士の声はまだわたしの耳にある。今度わたしはその人の愛したものを自分でもすこしばかり植えて見て、どの草でも花咲くさかりの時を持たないものはないことを知った。おそらくどんな芸術家でも花の純粋を訳出することは不可能だと言って見せたロダンのような人もあるが、その言葉に籠る真実も思い当る。朝顔を秋草というは、いつの頃から誰の言い出したことかは知らないが、梅雨あけから秋風までも味わせて呉れるこんな花もめずらしいと思う。わたしがこれを書いているのは九月の十二日だ。新涼の秋気はすでに二階の部屋にも満ちて来た。この一夏の間、わたしは例年の三分の一に当るほども自分の仕事をなし得ず、せめて煩わなかっただけでもありがたいと思えと人に言われて、僅かに慰めるほどの日を送って来たが、花はその間に二日休んだだけで、垣のどこかに眸を見開かないという朝とてもなかった。