Classici giapponesi con furigana
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たねがみのあおむころ
種紙の青む頃
前田 夕暮
Leggi 種紙の青む頃 (たねがみのあおむころ) di 前田 夕暮 (まえだゆうぐれ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1464 caratteri · 3 schermate
」
と言って父は私を先きにして、背なかを両手で軽く押さえて、ぐんぐんと押上げてくれる。
私は後ろにのけぞり返るようにして、両足にあるかぎりの力を入れてふん張っても、ひょろひょろと前に体が出て行く。枝垂れていた笹の葉が顔にさらさらと触わる。と、もう藪の出口で、日が明るく照っている。とうとう私は藪上の桑畑の畦まで押しあげられる。
「や、おもいおもい、汗が出た。」
「お父さんは駄目だなア、俺は汗などちっともかかないに。」
ははははと父はいかにも快げに笑う。その高い笑い声が筒ぬけに向うにとんで行って、うす烟っている榛の林にぶつかると、鳩が二羽はたはたと羽ばたいて飛びたつ。
眼の前の桑は、もうすっかりうすみどりに芽をふき、ゆうべ近い日の光が淀んでその梢を霞ませている。畦には野びるが冷たく葉をのばしている。
「此桑畠は何反あるの。」
「此畠は昔から三反畠と言っていたが、余り大きいから二つにしてある。」
「俺は此桑畑のなかを駈け抜けたいな。」
私は蚕が上簇近くなる頃、此桑畠に赤く桑の実のあるのを想像して父の顔を何となく下から仰いでみる。
父は何かうっとりと考えている。