Classici giapponesi con furigana
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くうしゅうかのにほん
空襲下の日本
海野 十三
Leggi 空襲下の日本 (くうしゅうかのにほん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.527 caratteri · 30 schermate
新宿の大通りには、刻々に群衆が増して行った。皆、他区から押しよせて来た避難民たちだった。
「お婆さん、どこから来たんです」
在郷軍人が提灯の薄あかりに、風呂敷包を背負ってウロウロしている老人を見つけた。
「あたしゃ、中野から来たんですよ。甲州の山の中へ逃げようと思うんですけれど、汽車は新宿からでないと出ないというので歩いて来たんですよ。しかしこの、おっそろしい群衆では、あたしのような年寄はとても乗れませんですよ。どうしたら、ようございましょうね」
「じゃ、お婆さん。慌てて逃げても駄目だから、この駅の地下室へ入っていなさい。今に毒瓦斯でも来ると、地べたで死なねばなりませんからネ」
「毒瓦斯? ほんとうにあの毒瓦斯というのが来るのですか、ヤレヤレ」
婆さんは闇の中へ、可哀そうな姿を消した。
「君、瓦斯マスクを売っているとこ、知りませんか。教えてくれれば、五百円を今、あなたに進呈しますが」
金持らしい紳士が、在郷軍人によびかけた。
「配給品以外にはないようです。お気の毒さま」
「じゃその配給品を是非売って下さい。このとおり両手を合わせて頼みます。僕はいいのだ。しかし妻が可哀そうだ。