Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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どうてい

童貞

豊島 与志雄

Leggi 童貞 (どうてい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6314 caratteri · 13 schermate

Aozora Bunko

ぼんやりしていた心地を、ふいに、見覚えのある町角から呼び醒されて、慌てて乗合自動車から飛び降りた。それから機械的に家の方へ急いだ。

胸の中が……身体中が、変にむず痒くって、息がつけなかった。頬辺から鼻のあたりに、こな白粉の香がこびりついていて、掌で……それからハンケチで、いくら拭いても取れなかった。拭けば拭くほど、ぷーんと匂ってきた。

嬉しいようで、なさけないようで、ほーっと息を吐くと、その息の根が震えた。

晴れてるのか曇ってるのか、底知れぬ茫とした空だった。……が、宵闇に浮び出てる軒燈の灯が、きらきらと、珍らしくて美しかった。

よその家へでも迷い込むような気持で、静に自家の玄関へはいった。誰も出迎える者がない……よかった、と思うとたんに、女中が立ってくる気配がした。それが却ってきっかけとなって、つかつかと茶の間へはいっていった。

「まあー、朝から出たっきり、どこへ行っていました。」

「井上君のところで遅くなって……。」

「そう、御飯は。」

「済みました。」

「やはり井上さんのお宅で……。それならいいけれど、こんどからは、御飯はどうするかちゃんと云っておかなければ困りますよ。