Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つきじがし

築地河岸

宮本 百合子

Leggi 築地河岸 (つきじがし) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7825 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

その男の呆然としている顔の上を、夏の夜の色々なネオンの光りが矢継早に走った。間をおいて、もう一台バスが同じような叫びを盛って上野の方へ走った。バンザーイと亢奮した声の嵐と小旗のひらめきの只中で、ぼんやりした微笑をこりかたまらしていた若者の顔を、道子は容易に忘れることが出来ないでいるのであった。

赤坊を背負ったおかみさんは、気のたかぶっている眼の端に道子の来かかる姿をとらえると、自分の手を持ちそえて一人の若い女に縫って貰っている最中だのに、

「あ、ちょっとすみませんが願います」

と気ぜわしく呼びとめ、前のひとが赤糸の丸をしごく間ももどかしそうに、

「おねがいします」

と二足ばかり小走りによった。

道子は、ハンドバッグを腋の下へ押えこんだ不自由な手頸の動かしかたで縫いながら、

「御主人ですか?」

と訊いた。

「ええ、そうなんですよ、あなた。子供が三人いるんですよ」

真岡の袂でのぼせあがっている顔をふきながら、おかみさんは、

「すみません」と礼を云った。

省線の窓からも、号外売りが腰の鈴をふりながら、街をかけて行くのなどが見下せる。道子のとなりに腰をかけている若い二人づれが、自分たちの興奮を気軽さにすり代えた高調子で頻りに喋った。