Classici giapponesi con furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Leggi 篝火の女 (かがりびのおんな) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.727 caratteri · 56 schermate
『――行って参ります』
夜は出やすかった。
梅花の多い城下である。錦小路のくら闇には、ほのかな香がうごいていた。町をまっ直ぐに突きぬけると、松の樹の間が青白く光っている。そして、ざあっと濤の階音が裾を吹いてくる。
萩乃は、浜を見まわした。
『大七様あっ……』
約束の人影は見えないのである。ここでと云った巨きな松の下にも。その附近にも。
『どうしたのだろう?』
行きつ戻りつしていた。――すると、浜に曳きあげてある一艘の漁船の中から、
『おう、東郷家の召使か』
と、人の声がした。
思わず、はいと答えながら側へ走って、
『大七殿か』
寄ると、途端に、
『捕れっ』
と、苫を刎ねて云った者がある。
萩乃は、その顔を見て、
『あっ――』
と、身ぶるいして蹌めいた。
どこに潜んでいたのか、砂を蹴って、真っ黒に彼女をつつんだ人影が、彼女の必死な反抗をたたみ伏せて、後ろ手に縄をまわしてしまった。
× ×
× ×
帰ろう筈はない。――帰らぬ萩乃を、八雲は、不安な胸をいだきながら待っていた。
『どうしたのであろう? ……。