Classici giapponesi con furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Leggi 篝火の女 (かがりびのおんな) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.727 caratteri · 56 schermate
『――三郎進どのはいかがせられたか。かねてのおん誓いを果さるる吉日、お支度はまだかっ』
すると、城の狭間から、髪の白い一人の老武士が顔をだした。見ると、物の具をすっかり解いて、麻裃に平服を着ているのである、白扇を振って答えながら、
『初めてお目にかかる。某は、三郎進の父、安中越前守長房でおざる。このたびのお取計らい、なんと申そうやらただ感涙にくれてござる。今暁、頂戴いたした密使のお言伝てによって、われ等父子、死すとも北条家には渡しがたきこの松井田城ではあれど、貴公の義心に、向くる矢もはや尽きた。三郎進の身は、仰せにまかせてござるが、この越前守は、はや老い先なき身、この城の熨斗がわりに添えてただ今進上申すであろう。見たまえや、老武者の最期を――』
『おお』
熊楠が、扇子を駒のたてがみへ下げた刹那に、狭間に見えた安中越前守のすがたはもうそこになかった。そして、真っ赤な炎が、すべての狭間からいちどに噴きだしていたのである。
『落ちたっ、――城は落ちたぞ。里見、その他の味方に越されては、相木勢の恥辱ぞ、武士の名がすたるぞ、かかれ、乗れやっ』
云うが早いか、抑、どうした事なのであろう、相木熊楠は、そのまま鞭を駒にあてて、戦場から鷹のように何処かへ翔け去ってしまった。