Classici giapponesi con furigana
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もんつきをきるのき
紋付を着るの記
吉川 英治
Leggi 紋付を着るの記 (もんつきをきるのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2454 caratteri · 5 schermate
或る年の暮だった。自分が二十三、四歳のころで両親もまだそろっていた。私の細腕のかせぎで一家弟妹なんとかその日その日を過ごし、家は浅草栄久町の新堀ばたに借家していた。その大晦日のことである。病床にあった父も起き直って、母と共に何かきげんよく呉服屋から届いたばかりのたとうを解いて見ていたが、まもなく私を呼んで『おまえの春着が出来てきたぞ、ちょっとそこで着てみないか。年始歩きには、やはり紋付でなければいけない』と言った。丸に鷹の羽の紋と黒羽二重の冷たい艶が、あたりのスス壁や母の貧乏やつれとは余りにも似つかわしくなく光って見えた。私はどういう気だったのか、よく分析できないが『ぼく。紋付なんかいりません。嫌いなんです。何も正月だからッて』と、ニベもなく言ってしまった。さあそれからである。
紋付論をたたかわせて、父の病状を一時悪くしたかと思われるほど父を怒らせてしまったのだった。
折り目切り目とよくいうが、むかしの人には見得でなく、日常はどうでも何かの折にはくずせない「容儀」同時に「礼儀」の観念がつよかったらしい。私の父などもその典型的な人で、裏店住居から銭湯へ行くのでさえ、母がハキ物を揃え、両手をつかえて『行ってらっしゃい』