Classici giapponesi con furigana
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むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Leggi 紫の壜 (むらさきのびん) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.802 caratteri · 24 schermate
あれから、私は家に帰る隙がなかった。そのことをも予想して、弓子の書箋――彼女が誰かに長い手紙を書きかけて、それを自ら焼き捨てた、その残りの書箋で、手短かに妹へ手紙を書いた。或は無実の罪を負って暫く家へ帰れないかも知れないこと、決して心配するに及ばないこと、そして最後に、北海道行きを決心したこと、但しいつ行けるようになるか分らないが、その旨を伯父に至急知らせて貰いたいこと、それだけを書いた。そしておばさんの主人に頼んで、家へひそかに届けて貰った。
もう気に懸るものはない。ただ、私の上に押っ被さってきて、私を打ち拉ごうとするものがある。検察当局の重圧であろうか。四方の荒壁の重圧であろうか。然し私にはそれに対抗し得る自信がある。――高いところに、鉄棒のはまった窓があって、青空の一片が切り取られて見える。端坐して、それに見入り、それに縋っておれば、私は自由な呼吸が出来るのだ。