Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みみこうすい

耳香水

大倉 燁子

Leggi 耳香水 (みみこうすい) di 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.465 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

まさか鼠色の男ではありますまいが。

『何か御用事ですか?』

咄嗟に甘い言葉が出なかったので、私は思い切ってありのままを云いました。

『帳場の机の上に置いてあった耳香水が紛失したんです。御存じないのでしょうか?』

するとその男は懐中から見覚えのある象牙細工のシュバリエを掌にのせて、私達に示しながら少しの躊躇もせず云ってのけました。

『これでしょう? これは私の妻のものです。帳場にありましたから取って来ました』

彼は耳香水をさも大切そうに内ポケットに納い込んでしまいました。

それから半歳ばかり過ぎてのことですが、支那から帰って来た人の話に、真物の鼠色の男が遂々捕ったということを聞きました。南京街の支那人のホテルに隠れていた若い西洋人だったと申しました。しかしそれが果して私の見た男、K夫人の愛人であるかどうかは分りません。

K夫人も、鼠色の男も、耳香水もすべて謎として、解かないでおく方が何だか奥床しい気がするじゃございませんか」