Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Leggi 肌色の月 (はだいろのつき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.706 caratteri · 101 schermate

Aozora Bunko

心臓にきたはげしいショックで久美子はよろめいた。

「宇野さん、どうしたの」

「疲れたのよ。きょうは帰るわ」

アパートへ帰るなり、久美子は鏡の前へ行って眼のなかをしらべた。白眼のところに黄色い翳のようなものがついている。爪にも掌にもそれらしい徴候があった。

あわてて服を脱いで下着をしらべてみた。シュミーズの背筋にあたるあたりにあの不吉な黄色いシミが、爪黒黄蝶の鱗粉のようなものがかすかについていた。

いずれ、こんなことになるのだろう。それはわかっていた。遠い将来のことだろうと気をゆるしていたが、意外にも早くやってきたので、久美子は愕然とした。

「疲労だね」

肋骨の下を念入りに触診してから、内科の主任は事もなげにいった。

「君達のグループは働きすぎるよ」

「うちのものはみな癌で死んでいるんです。父は肝臓癌でした……あたし黄疸なんでしょう?」

「黄疸というほどのものでもない。この冬、軽い肺炎をやったね。その名残りだ。しばらく仕事を休んで、うまいものを食ってごろごろしていれば癒ってしまう」

医務室のへっぽこ医者にわかるわけはないのだ。癌のことならこちらのほうがよく知っている。