Classici giapponesi con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate
その眼は、金五郎の左腕に、釘づけされた。夫の誤解や、怒りを解こうという気持よりも、彼女にとっては、夫の腕に、これまで見たこともない、怪しい模様の出来ているのが、重大関心事であった。
天井から吊るされたランプの火屋に、さっきから、一羽の大きな蛾が、しきりと、戯れていた。バタバタと飛ぶたびに、羽から細かい金粉を散らしていたが、このとき、金五郎の方に飛んで行って、左腕にとまった。その途端、ふっと、蛾の姿が消えた。
マンは、ぎょっとして、眼を皿にした。夫の腕のうえで、らんらんと、巨大な二つの眼をきらめかせ、雲を望んで昇天している龍が、その蛾をバクッと呑んだように見えたのである。それは妖怪じみた幻想となって、マンを戸まどいさせた。これまで二年間、夫婦として親しんだ夫が、まったく別人と化したような、不思議な錯覚におちいって、奇態な吐息が出た。
「その彫青、いったい、どうしたんですか? いつ、どこで、誰から彫れて貰ったんですか?」
そんな当然の問いが、怒りの形相ものすごく、突っ立っている金五郎を見ると、どうしても、口から出なかった。といって、マンには、時次郎との仲を疑われた弁解をしようという気持も、湧いては来ないのである。