Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

眼を皿にした。

あまり敏捷でない老掏摸は、幾度か群衆に捕えられた。追手の場合もあれば、正面からの弥次馬の場合もあった。そのたびに、必死に暴れまわって、すり抜けたが、次第に弱り、帯がとけ、着物が剥がされて行った。四月であるから、寒いことはない。それどころか、泥棒は汗だくだ。

「ふん縛れ」

掏摸が老いぼれのうえに、何も兇器を持っていないことを知ると、群衆は面白がって追跡する。

とうとう、裸にされてしまった。自分でなったのかも知れない。

金五郎は、びっくりした。

痩せさらばえた身体の全面に、彫青をほどこしている。胴巻と褌一つになってしまったのに、まるで青黒いシャツでも着ているように見えた。そして、その彫青は般若と大蛇。

金五郎には、はっきりとした記憶があった。忘れようとしても忘れることの出来ない、道後温泉の男。

(般若の五郎じゃ)

金五郎は、あたりを見まわした。

逃げる途中に、老掏摸がぬぎすてて行った帯、着物、鳥打帽、草履、などが方々に散乱している。縞模様の煙草入れも、彼の物かも知れない。いずれも群衆の土足に踏みにじられて泥まみれだ。金五郎は、それらを、一つずつ、探しながら、拾い集めた。