Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

向こう鉢巻をした助役の巨漢は、一軒の戸口の前に来て、急に、顔色を変えた。

「なんてや、それ、ほんとか?」

喪心せんばかりに、狼狽した声で、喚いた。

「ほんとです」

寝ぼけ眼の男が、今にも叩かれはせぬかと、もう首をちぢめて、おどおどと答えた。

「畜生奴、尻割りやがったか」

助役は、呻いた。

「昨夜は一緒に寝たんです。たしかに、六人、蒲団をしいて、蚊帳に入りました。それなのに、今、ボーシンさんに起されたら、わたし一人しか、いないんで……」

「間抜け奴」

予期していたとおり、鉄の八ツ手のような平手が、風をおこして飛んで来た。病身らしい中年仲仕は、将棋の駒のように、わけなく倒れた。

「五人も、ずらかるのに気づかんなんて、貴様は、鉛か。……どうも、昨夜、玉井の様子がおかしいと思うた」

助役は、ばりばりと、歯がみをした。

独身者ばかり、六人が、この部屋にいるのだった。六畳、四畳半、それに、台所がついていて、男の手で自炊をしている。この六人のうち、三人が、昨夜、指名されていた。玉井金五郎も、その一人であったが、助役が手筈どおり、起しに来てみると、六人のうち、五人の姿が見えないのである。