Classici giapponesi con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate
「お邪魔いたしました」
金五郎は、悠々と、子分連中の間を抜けて、玄関に行った。靴をはき、また、長い石甃を歩いて、鉄門の外に出ると、フウウッ、と、全身が風船玉のようにふくらんで縮んだような、巨大なためいきが、ひとりでに出た。
「なんちゅうことか」
泣きそうな顔で呟いて、海岸の方に歩きだした。足が重い。いつも見なれた街が、まるで、知らぬ他国のような白々しさで、眼に映る。街の人々の顔も、異国人めいて感じられた。多くの視線が、すべて、嘲笑の矢になって、全身を刺すようだ。
金五郎は、眼を伏せ、うなだれて、歩いた。
(おれの一生は、終った)
下唇が、血の出るほど、強く、噛まれていた。
「争議本部」では、評議員たちが待っていた。十時をすこし過ぎている。
「勝則」
と、息子を、廊下に呼びだした。
「なんですか」
「今朝、あずけた書類をくれ。今日の会に出られなんだら、お前に開けて貰おうと思おうとったけんど、出られたけ、もう、ええ」
「そうですか」。
勝則は、ちょっと、父の顔を見たが、風呂敷包みを取って来ると黙って渡した。
「勝則」
「はあ?」
「友田喜造に、逢うて来たよ」
息子は、無言で、父の顔を見た。