Classici giapponesi con furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.633 caratteri · 74 schermate
深川の湿地に生れて吉原の水に育ったので、顔の色は生れつき浅黒い。一度髪の毛がすっかり抜けた事があるそうだ。酒を飲み過ぎて血を吐いた事があるそうだ。それから身体が生れ代ったように丈夫になって、中音の音声に意気な錆が出来た。時々頭が痛むといっては顳へ即功紙を張っているものの今では滅多に風邪を引くこともない。突然お腹へ差込みが来るなどと大騒ぎをするかと思うと、納豆にお茶漬を三杯もかき込んで平然としている。お参りに出かける外、芝居へも寄席へも一向に行きたがらない。朝寝が好きで、髪を直すに時間を惜しまず、男を相手に卑陋な冗談をいって夜ふかしをするのが好きであるが、その割には世帯持がよく、借金のいい訳がなかなか巧い。年は二十五、六、この社会の女にしか見られないその浅黒い顔の色の、妙に滑っこく磨き込まれている様子は、丁度多くの人手にかかって丁寧に拭き込まれた桐の手あぶりの光沢に等しく、いつも重そうな瞼の下に、夢を見ているようなその眼色には、照りもせず曇りも果てぬ晩春の空のいい知れぬ沈滞の味が宿っている――とでもいいたい位に先生は思っているのである。実際今の世の中に、この珍々先生ほど芸者の好きな人、賤業婦の病的美に対して賞讃の声を惜しまない人は恐らくあるまい。