Classici giapponesi con furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.633 caratteri · 74 schermate
物一たび去れば遂にかえっては来ない。短夜の夢ばかりではない。
友達が手酌の一杯を口のはたに持って行きながら、
雪の日や飲まぬお方のふところ手
と言って、わたくしの顔を見たので、わたくしも、
酒飲まぬ人は案山子の雪見哉
と返して、その時銚子のかわりを持って来たおかみさんに舟のことをきくと、渡しはもうありませんが、蒸汽は七時まで御在ますと言うのに、やや腰を据え、
舟なくば雪見がへりのころぶまで
舟足を借りておちつく雪見かな
その頃、何や彼や書きつけて置いた手帳は、その後いろいろな反古と共に、一たばねにして大川へ流してしまったので、今になっては雪が降っても、その夜のことは、唯人情のゆるやかであった時代と共に、早く世を去った友達の面影がぼんやり記憶に浮んで来るばかりである。
○
雪もよいの寒い日になると、今でも大久保の家の庭に、一羽黒い山鳩の来た日を思出すのである。
父は既に世を去って、母とわたくしと二人ぎり広い家にいた頃である。母は霜柱の昼過までも解けない寂しい冬の庭に、折々山鳩がたった一羽どこからともなく飛んで来るのを見ると、あの鳩が来たからまた雪が降るでしょうと言われた。