Classici giapponesi con furigana
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あし
葦
山本 周五郎
Leggi 葦 (あし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.406 caratteri · 25 schermate
女は紐を解き、蓋をあけて、中から鬱金木綿に包んだ物をとりだした。ちょっとためらったのち、女はそれをひろげた。くるんである綿をのけると、古い漢鏡が一面でてきた。……女は古鏡のおもてを拭いて、そこにうつる自分の顔をみつめた。
霧は濃くなって、川波の上を低くゆるやかに這いはじめた。空には赤みがさし、霧を透して高く鳥の渡るのが見えた。……鏡をみつめる女の表情が変った。きわめて僅かな時間に、眼のまわりに暈があらわれ、それが顔つきぜんたいに深い陰翳を与えた。眸子は大きくなり、きびしい光を帯びて耀いた。「いただいてまいります」女はこう呟いて、鏡を元のように包み、ふところへしまった。そして袂から一通の封じ文をとりだし、筐の中に入れて蓋をした。紫の紐を結ぶとき女の手はふるえ、眼から泪がこぼれ落ちた。
霧はいよいよ濃くなり、条をなし、渦を巻いて川しものほうへと揺曳している、微風が立ちはじめたのだ。澄んだ声で鳴きながら、一羽の鶺鴒が葦の上をかすめ、淀みのかなたへ飛び去った。
みぎわの土の上に筐を置いて、女は立ちあがった。川面を見た。乾いている唇をなめ、つよく歯で噛みしめた。