Classici giapponesi con furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Leggi 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) di 田山 花袋 (たやまかたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.948 caratteri · 59 schermate
腹の中の子の動くのを覚ゆる時には、これさえ産まれたなら……と常に思った。そうしたならまた労働して自分だけのことをしよう。そして無情の男を捜し出して恨みを晴らしてやろうと思った。時にはまたその男のことを考えて、どうかしてもう一度いっしょに暮らしたい。かわいい子が生まれて、それを見せてやったなら、男もきっと折れて、やさしくなるに違いないと思った。お作はまだ男を恋うていた。
子は産まれた。
産まれぬ前と生まれたあとの事情がまるで変わった。身二つになりさえすればよいと思ったが、それは誤りであったことがすぐわかった。幼いながらも人間の絶えざる要求、乳を求めて日夜に泣く赤児の声、抑(おさ)ゆることのできぬ強いはげしい母親の愛情、お作は離るべからざる強い羈絆(きずな)のさらに身にまつわるを新たに覚えた。
過労と営養不良とで、乳が十日目ころからぱったり留まった。赤児は火のついたように間断(ひっきり)なしに泣く。それを聞くと、母親というものは総身の血が戦(ふる)えるほどに苦しく思った。で、お作もその身の食物を求めるよりもまず赤児の乳を尋ねまわった。乳酪(ミルク)を買う銭がないので、隙(ひま)をつぶして、あっちこっちと情け深い人の恵みを求め歩いた。