Classici giapponesi con furigana
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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Leggi 藤九郎の島 (とうくろうのしま) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9765 caratteri · 19 schermate
誰も彼も呆気にとられ、顔を見あわして溜息をつくばかりであった。
その夜は、軽石の浜で身体を寄せあって眠ったが、明け方近く、さかんに風が吹きだして、船も艀ももろともに粉々にし、岸波が船板だけを返してよこした。
こういうしあわせで、生きているかぎり、この島に居着かなければならぬことになったが、何にとりついて命を助かろう方便も思いつかぬことで、みなみな途方にくれ、なかには顔に手をあてて泣きだすものもあった。
左太夫がいった。
「そうして、嘆いていても、しようがあるまい。こうなったからには、覚悟をきめ、みなで力を合せて生きていく道を才覚しようではないか。水のないことはわかったが天の恵みの雨水というものもある。磯の岩にはアラメ、カジキ、鮑もあれば藤壺もある。昨夜、たしかに海鳥の声を聞いた。海鳥を食い、磯魚をせせっても、一年や二年は生きのびられぬことはあるまい。なにより、お前らは潮の流れのことを忘れはしまい。われわれの船が、こう来るからには、ほかの船もかならずこの近くへ来る。神鬮に上陸と出たのは、その辺のところを、お示しになったのだと、おれには思われる」
みなもそれで合点し、力のかぎり生きて行こうと固い申しあわせをした。