Classici giapponesi con furigana
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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Leggi 藤九郎の島 (とうくろうのしま) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9765 caratteri · 19 schermate
いつごろ乗捨てたものか、船腹におびただしい海草がついていた。胴ノ間に七十俵ほどの米があった。いずれも濡れ米だが、乾立てたら、一人宛に三石ずつもある勘定で、これこそは命の法楽と、雀躍りして喜び、とりあえず浜へ積みおろし、そこから岩穴の口に運んだ。この三年、穀粒と名のつくものはただの一口も咽喉管を越させていないので、身体にたあいがなく、若いものでも一俵に二人、年寄りどもは四人がかりで一俵の米にとりつき、八日かかって、ようやく運び終った。米のほか、帆布、鳶口、大釘など、役にたつものがいろいろあったので、それも悉皆取りおさめ、船板は釘からはずして、入江の岸に井桁に積みあげておいたが、急に高波が来て、跡形もなく浚って行ってしまった。
日和を見さだめて、俵の切りほどきにかかったが、そのうちに芽をふいている籾が一俵あった。日頃は落着いている船頭の左太夫が、それを見るなり、
「ありがたや」
と手を合せて籾種を拝んだ。
「さあ、みなもいっしょに拝め。これで、命恙く国に帰れることにきまった」
「この籾が帰国のしるしというのは」
「この島で死なせようつもりなら、穀種などたまわるはずはない。