Classici giapponesi con furigana
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きょこうのはる
虚構の春
Leggi 虚構の春 (きょこうのはる) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.586 caratteri · 108 schermate
今すぐ会場へ引返してみたところで、(充分の考慮もせず、ただ、足手まといになるつもりか、)と叱られるくらいがおちであろうと、永いことさまよいました。人に甘え、世に甘え、自分にないものを、何かしらん、かくし持ってあるが如くに見せかける、その思わせぶりを、人もあろうに、あなたに指さされ、かなしかった。ああ、めそめそしたことを書いて御免下さい。私は、その夜の五円を、極めて有効に、一点濁らず、使用いたしました。生涯の記念として、いまなお、その折のメモを失くさず、『青い鞭』のペエジの間にはさんで蔵して在るのです。三銭切手十枚、三十銭。南京豆、十銭。チェリイ、十銭。みのり、十五銭。椿の切枝二本、十五銭。眼医者、八十銭。ゲエテとクライスト、プロレゴーメナ、歌行燈、三冊、七十銭。鴨肉百目、七十銭。ねぎ、五銭。サッポロ黒ビイル一本、三十五銭。シトロン、十五銭。銭湯、五銭。六年ぶりで、ゆたかでした。使い切れず、ポケットには、まだ充分に。それから一年ちかく、二三度会った太宰治のおもかげを忘じがたく、こくめいに頭へ影をおとしている面接の記憶を、いとおしみながら、何十回かの立読みをつづけて来た。