Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
――後は? 後は後から考える。事実は何よりも有効である。結婚と云う事実が成立すれば、万事はこの新事実を土台にして考え直さなければならん。この新事実を一般から認められれば、あとはどんな不都合な犠牲でもする。どんなにつらい考え直し方でもする。
ただ機一髪と云う間際で、煩悶する。どうする事も出来ぬ心が急く。進むのが怖い。退ぞくのが厭だ。早く事件が発展すればと念じながら、発展するのが不安心である。したがって気楽な宗近が羨ましい。万事を商量するものは一本調子の人を羨ましがる。
春は行く。行く春は暮れる。絹のごとき浅黄の幕はふわりふわりと幾枚も空を離れて地の上に被さってくる。払い退ける風も見えぬ往来は、夕暮のなすがままに静まり返って、蒼然たる大地の色は刻々に蔓って来る。西の果に用もなく薄焼けていた雲はようやく紫に変った。
蕎麦屋の看板におかめの顔が薄暗く膨れて、後から点ける灯を今やと赤い頬に待つ向横町は、二間足らずの狭い往来になる。黄昏は細長く家と家の間に落ちて、鎖さぬ門を戸ごとにくぐる。部屋のなかはなおさら暗いだろう。
曲って左側の三軒目まで来た。門構と云う名はつけられない。