Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate

Aozora Bunko

灰皿の上に燐寸がある。甲野さんは手を延ばして燐寸の箱を取った。取りながら横に振ると、あたじけない五六本の音がする。今度は机へ帰る。レオパルジの隣にあった黄表紙の日記を持って煖炉の前まで戻って来た。親指を抑えにして小口を雨のように飛ばして見ると、黒い印気と鼠の鉛筆が、ちら、ちら、ちらと黄色い表紙まで来て留った。何を書いたものやらいっこう要領を得ない。昨夕寝る前に書き込んだ、

入レ道無言客。出レ家有髪僧。

の一聯が、最後の頁の最後の句である事だけを記憶している。甲野さんは思い切って日記を散らばった紙の上へ乗せた。屈んだ。煖炉敷の前でしゅっと云う音がする。乱れた紙は、静なるうちに、惓怠い伸をしながら、下から暖められて来る。きな臭い煙が、紙と紙の隙間を這い上って出た。すると紙は下層の方から動き出した。

「うん、まだ書く事があった」

と甲野さんは膝を立てながら、日記を煙のなかから救い出す。紙は茶に変る。ぼうと音がすると煖炉のうちは一面の火になった。

「おや、どうしたの」

戸口に立った母は不審そうに煖炉の中を見詰めている。甲野さんは声に応じて体を斜めに開く。袂の先に火を受けて母と向き合った。