Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
雨は一つである。冬は合羽が凍る。秋は灯心が細る。夏は褌を洗う。春は――平打の銀簪を畳の上に落したまま、貝合せの貝の裏が朱と金と藍に光る傍に、ころりんと掻き鳴らし、またころりんと掻き乱す。宗近君の聴いてるのはまさにこのころりんである。
「眼に見るは形である」と甲野さんはまた別行に書き出した。
「耳に聴くは声である。形と声は物の本体ではない。物の本体を証得しないものには形も声も無意義である。何物かをこの奥に捕えたる時、形も声もことごとく新らしき形と声になる。これが象徴である。象徴とは本来空の不可思議を眼に見、耳に聴くための方便である。……」
琴の手は次第に繁くなる。雨滴の絶間を縫うて、白い爪が幾度か駒の上を飛ぶと見えて、濃かなる調べは、太き糸の音と細き音を綯り合せて、代る代るに乱れ打つように思われる。甲野さんが「無絃の琴を聴いて始めて序破急の意義を悟る」と書き終った時、椅子に靠れて隣家ばかりを瞰下していた宗近君は
「おい、甲野さん、理窟ばかり云わずと、ちとあの琴でも聴くがいい。なかなか旨いぜ」
と椽側から部屋の中へ声を掛けた。
「うん、さっきから拝聴している」