Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
糸子は五指を並べたような女である。受ける感じが間違っているとは云えぬ。しかし変だ。物足らぬとは指点す指の短かきに過ぐる場合を云う。足り余るとは指点す指の長きに失する時であろう。糸子は五指を同時に並べたような女である。足るとも云えぬ。足り余るとも評されぬ。
人に指点す指の、細そりと爪先に肉を落すとき、明かなる感じは次第に爪先に集まって焼点を構成る。藤尾の指は爪先の紅を抜け出でて縫針の尖がれるに終る。見るものの眼は一度に痛い。要領を得ぬものは橋を渡らぬ。要領を得過ぎたものは欄干を渡る。欄干を渡るものは水に落ちる恐れがある。
藤尾と糸子は六畳の座敷で五指と針の先との戦争をしている。すべての会話は戦争である。女の会話はもっとも戦争である。
「しばらく御目に懸りませんね。よくいらしった事」と藤尾は主人役に云う。
「父一人で忙がしいものですから、つい御無沙汰をして……」
「博覧会へもいらっしゃらないの」
「いいえ、まだ」
「向島は」
「まだどこへも行かないの」
宅にばかりいて、よくこう満足していられると藤尾が思う。――糸子の眼尻には答えるたびに笑の影が翳す。
「そんなに御用が御在りなの」