Classici giapponesi con furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate
やがて彼は碑を正面にして坐った。彼の手には、鞘に納められた天国が、握られていた。
「栞や、わしはここで一人で考えごとをしていたいのだよ。一人にしておいてくれ」
薪左衛門は、握っている白鞘の剣の周囲を、黄色い蝶が、謎めいた飛びかたをしているのを、無心で眺めながら、何んとなく放心したような声で云った。
塚の中からの声
「はい」
と栞は、素直に答えて、衣裳の赤い裾裏と、草履の赤緒との間に、白珊瑚のように挾まっている可愛らしい素足を運ばせ、塚を下りた。そうして、塚の裾に、萠黄色の座布団を敷いた躄り車が、もうその座布団の上へ、落花を受けて、玩具かのように置いてある横に立って、父親の方を振り返って見たが、やがて所在なさそうに、道了塚の背後に、壁のように立っている雑木林――かつて、五味左門が、紙帳を釣って野宿した、その雑木林の中へはいって行った。
一人となった薪左衛門は、碑を見上げて、じっとしていた。裾に坐って、見上げているためでもあろう、六尺の碑が、二丈にも高く思われ、今にも、自分の上へ、落ちかかって来はしまいかと案ぜられた。陽に照らされて、その碑の面は、軟らかく艶めいてさえ見えたが、精悍に刎ねて刻ってある七字の題目は、何かを怒って、叱咤しているかのように思われた。