Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

けれども、遠くにある立樹の色が空に包まれてだんだん黒ずんで行くにつれて、空の色も時を移さず変って行った。自分は名残の光で岡田の顔を見た。

「君東京にいた時よりよほど快豁になったようですね。血色も大変好い。結構だ」

岡田は「ええまあお蔭さまで」と云ったような瞹眛な挨拶をしたが、その挨拶のうちには一種嬉しそうな調子もあった。

もう晩飯の用意もできたから帰ろうじゃないかと云って、二人帰路についた時、自分は突然岡田に、「君とお兼さんとは大変仲が好いようですね」といった。自分は真面目なつもりだったけれども、岡田にはそれが冷笑のように聞えたと見えて、彼はただ笑うだけで何の答えもしなかった。けれども別に否みもしなかった。

しばらくしてから彼は今までの快豁な調子を急に失った。そうして何か秘密でも打ち明けるような具合に声を落した。それでいて、あたかも独言をいう時のように足元を見つめながら、「これであいつといっしょになってから、かれこれもう五六年近くになるんだが、どうも子供ができないんでね、どういうものか。それが気がかりで……」と云った。

自分は何とも答えなかった。自分は子供を生ますために女房を貰う人は、天下に一人もあるはずがないと、かねてから思っていた。