Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひょうげんろんずいひつ

表現論随筆

豊島 与志雄

Leggi 表現論随筆 (ひょうげんろんずいひつ) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2259 caratteri · 5 schermate

Aozora Bunko

私達六七人の男女が、或る夏、泳げるのも泳げないのもいっしょになって、遠浅の海で遊んでいた。

一面に日の光が渦巻いていた。空は大きな目玉のようにきらきら光っており、海は柔かな頬辺のようににたにた笑っており、青い松林をのせた白い砂浜が、ゆるやかな曲線を描いて、その海と空と私達とを抱いていた。

人間的な親しい放心のなかに、動物的な遊戯心が踊りはねる。泳げる者の手につかまって、泳げない者がばちゃばちゃやってたのが、いつのまにか遊びにかわって、両手にすくった水をぱっと、相手の頭から浴せてしまった。

「あら、ひとの眼に……。」

頓狂な声を立てたのは若い女である。

でも、眼には僅か二三滴の水に過ぎない。頭から顔全体へかけてざぶりと浴せられた、その何百分の一かに過ぎない。それでも彼女にとっては、その何百分の一だけが、最も直接の感じであったろう。

これを客観的に云い現わすならば、彼女は頭から顔へかけて一杯水を浴せられた。それを彼女自身は主観的に、「あら、ひとの眼に……。」

客観的表現と主観的表現とは、そういうところに截然と区別せらるる。文学上のむずかしい理論を俟つ必要はない。