Classici giapponesi con furigana
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ぐんこくかようしゅう
軍国歌謡集
山川 方夫
Leggi 軍国歌謡集 (ぐんこくかようしゅう) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.655 caratteri · 80 schermate
自然、こちらも呼吸をころし、耳をすませたまま、そろそろと動いて行くその姿と動きとを想像する。ただ一度だけ見た小柄で色白なあの娘の、驚愕とも恐怖ともつかぬ開けっぴろげな表情を瞼にうかべながら、その沈黙に対抗する。……娘は、いつかの私のいたずらに、よほど肝をツブしたのらしく、一度だって前のように歌いながら下宿の窓の下を過ぎたことはなかった。どうやら、私は、彼女にはおそろしい敵と思われていたのにちがいない。げんに、通り越したな、と思った瞬間、バタバタと軽い靴の音が全速力で駈けだすのを、幾度となく私は聞いているのだ。
もちろん、私は二度といたずらをくりかえさなかった。それどころか、あの行為が歌声を殺さなかったことに、救われたような気持ちでいた。そして、毎夜くりかえされる彼女の通過するときに感じる、無数の黒い小鬼たちが音もなく干戈を交えているみたいな、影も形もない無言のおたがいの意識のたたかいは、次第に、私と彼女との、二人きりの奇妙なゲームのように思えてきた。いつのまにか、私は夜ごとの秘密な愉しみのように、それを待ちもうけている自分を発見した。
しばらく雨の夜がつづいたのは、あれは梅雨のせいだったのかもしれない。