Classici giapponesi con furigana
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とおののきぶん
遠野の奇聞
泉 鏡花
Leggi 遠野の奇聞 (とおののきぶん) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4768 caratteri · 10 schermate
またこれも何の書なりしや忘れたり。疾き流れの谿河を隔てて、大いなる巌洞あり。水の瀬激しければ、此方の岸より渡りゆくもの絶えてなし。一日里のもの通りがかりに、その巌穴の中に、色白く姿乱れたる女一人立てり。怪しと思いて立ち帰り人に語る。驚破とて、さそいつれ行きて見るに、女同じ処にあり。容易く渉るべきにあらざれば、ただ指して打騒ぐ。かかる事二日三日になりぬ。余り訝しければ、遥かに下流より遠廻りにその巌洞に到りて見れば、女、美しき褄も地につかず、宙に下る。黒髪を逆に取りて、巌の天井にひたとつけたり。扶け下ろすに、髪を解けば、ねばねばとして膠らしきが着きたりという。もっともその女昏迷して前後を知らずとあり。
何の怪のなす処なるやを知らず。可厭らしく凄く、不思議なる心持いまもするが、あるいは山男があま干にして貯えたるものならんも知れず、怪しからぬ事かな。いやいや、余り山男の風説をすると、天井から毛だらけなのをぶら下げずとも計り難し。この例本所の脚洗い屋敷にあり。東京なりとて油断はならず。また、恐しきは、
猿の経立、お犬の経立は恐しきものなり。お犬とは狼のことなり。